Avalon by Roxy Music/ ロキシー・ミュージックの『アヴァロン』


ロキシー・ミュージックの、ロック史に燦然と輝く、麗しくも芳しきアルバム。

ところで、私は18歳の頃、同人誌まがいのサークルで短編小説などを書いていました。
作品のタイトルは、たとえば、『勝手にシド・バレット』。
なに考えていたんでしょうか。

主人公は、京都の大学教授。
心臓が弱く、暑い夏の昼間に、衣笠の町(金閣寺と竜安寺がある)で
アイスクリームを買うための小銭を探しているとき、あまりの暑さに胸をおさえてうずくまります。
発作がおさまって、気がつくと、向こうから一人の美少女が歩いて来るではないですか。
冷たいような、燃えるような、世界のすべてを串刺しにする、水銀のようなまなざしの少女。
彼女の名前は、ありません。
教授もずっと知らない。
だいいち、彼女は教授の存在に気づいていない(んじゃないかな)という設定で、
要するに『ベニスに死す』『ロリータ』『ドレミファ娘の血は騒ぐ』を換骨奪胎したものです。

教授は彼女に夢中になり、ストーカーまがいの行為をはじめます。
何度かニアミスしそうになるんですが、教授はあえて彼女と出会わない。
物かげから見ている。

京大西部講堂でニューウェイブのライヴがあります。
ローザ・ルクセンブルクやイディオット・オクロック。
彼女を追って教授も行きますが、ジャズとクラシックしか解さない教授には騒音でしかない。
そこで少し熱がさめます。

ある日、レコード屋で彼女を見かけたとき、教授はもうやめようと自分に言い聞かせるのですが、
彼女がドビュッシーを試聴しているのを見て、結局よけいに燃えてしまう。

その日彼女が買ったレコードが、ロキシー・ミュージックの『アヴァロン』。

「”アヴァロン”?アーサー王と円卓の騎士じゃないか!」と喜んだ教授は、
翌週の同じ曜日の同じ時間に同じレコード屋で、
同じ店員がレジに入るのをドキドキしながら待って、『アヴァロン』を買います。

それからあまり面白くない展開があって、
最後には教授は、伏見の酒蔵の前で見かけた彼女を追って、倒れます。
ふと見ると、屋形船に乗ろうとしている彼女が…。
教授は最後の力をふりしぼって、自分のソフト帽を川面に投げます。
帽子は屋形船のあとを流されて行くのですが、やがて沈んでしまう。

最後は教授の葬儀です。
英文学に功績のあった教授を悼んで、スピーチが読まれるなか、
教授の魂ははるか上空へ昇っていきます。

と、だれかが下界で、『アヴァロン』をかけている。
アルバム最後の曲「タラ」。
アンディ・マッケイのむせび泣くようなサックスと波の音が交錯するインストが、下界から聞こえてくるのです。

 これをかけてくれているのは、まさか…?
 それとも私は、もう、たどり着いたのだろうか?
 私は幸せか?
 最高の気分だ。
   それにしても、ひどいサックスだ!

と、これが『勝手にシド・バレット』の物語でありまして、もはやこの世には存在しません。
こんなことばっかり考えていたから、誰からも相手にされない暗い青春時代でした!
若いということは、本当にこわいもの知らずですね。

この埋もれた短編を、洞口依子様に・・・捧げちゃいかんって!


ロキシー・ミュージックが奏でる黄泉の国のインスト。 「タラ」でしゅ。

http://jp.youtube.com/view_play_list?p=9B01F1D3049ED08E


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